松居⼤悟監督
誰にも⾒つからないように、誰にも気づかれないように、離れてしまった⼿と⼿を無理やり引き合わせて、それを運命だとか必然だとか、都合のいい単語で括って知らないふりをしてる。単に時間が経っただけなのに、時間が関係性を引き離すなんて思い込んでるのは⾃分のエゴで。構ってほしかっただけなのかもなぁ。前より思い出す機会が増えたのは、年齢なのか、時代なのか、思い出そのものが⼤きすぎるのか。
オリジナルで、初めてのラブストーリーです。尾崎くんがきっとバンド⼈⽣を賭けて紡いだ曲を聴きながら、コロナ禍でうんうん悩んだ物語は、⼩さくて眩しいあの⽇を思い出す映画になりそうです。盟友の池松君と、鮮やかな伊藤沙莉さんと、素敵な役者スタッフたちと作りました。
きっと花束みたいとか⾊々⾔われるんだろうな。⾔われるよもう。⾔われる前に⾔うよ。でも当た ってるしなぁ。そんな迷いにこの先何度も包まれる気がするけど、それ以上に、かけがえのない優しい想いに包まれる人に届いたらいいなと思います。
愛がすべてなんかじゃないけど、愛がすべてで。愛ってなんだよ。愛がなんだだよ。また別の映画のタイトルを⾔ってしまった。『ちょっと思い出しただけ』です、俺はまだ本気出してないだけ、みたいとか⾔うなよ。俺は本気出したよ。マスクの向こうでニコニコさせられますように。
楽しみにしてくれたら嬉しいです。
池松壮亮
決定的に戻れないあの頃、コロナ以前からの 6 年間を描いたラブストーリーです。あの頃を成仏する映画や、あの頃を慈しむ映画は時代の変わり⽬には沢⼭作られるものですが、今と過去を同時にすくいとろうというこの作品の⼼意気にとても共感しました。
思い出せないことと、忘れられないこととが、⼈⽣そのものをかたどっているように思います。過去にしがみつくではなく、過去を無かったことにするではなく、全ての地続きに今があると信じています。あらゆる⼈の⼈⽣の過去が、その⼈の⼈⽣にあったことを感謝出来ますように。過去と今が、無かったことになりませんように。昔の気持ちを思い出して、⾊々あったけど今はもう⼤丈夫。でも、ちょっと思い出しただけ。そんな私たち⾃⾝についての映画になってくれることを願っています。
伊藤沙莉
松居大悟×池松壮亮×クリープハイプという私にとってかなり熱いゴールデンタッグの作品に携われることが決まってからインまで、はやる気持ちでいっぱいでした。
綺麗事を言うつもりなんてさらさらないし、ポジティブ、ネガティブな出来事を全て肯定するべきなんて全く思いませんが、私は確かに過去に存在したそれがあっての今なんじゃないかな、と常々思っています。
そういう過ぎた思い出や記憶を、ちょっと思い出しただけな時間もまた、悪くない一瞬だと思います。
ああ、あったなこんな時。とか
ああ、あの人元気かな。とか
そんな悪くない一瞬を、2人の時間を通してふと感じていただけたらいいなぁと思います。
そしてやはり音楽の力ってすごいと思います。
私は音楽に常に支えられていますし、それがあるだけでそのシーンや作品の深みが増したり彩が増します。
そんな音楽の力も感じていただけるといいなと思います。